埼玉新聞「月曜放談」
2005年(平成17年)8月15日(月曜日)
きっかけは地主さん
 「おはようございます」。武蔵野台地に広がる平地林「おおたかの森」から響く元気な声は、所沢市立向陽中・同所沢中・大井西中の生徒達で計八十名。今年も夏休みに三日間の社会体験授業で、薪割り、クワガタランド作り、松の子救出等を汗まみれになって、十五日間にわたり行っている。
 里山とも呼ばれる平地林は、個人の所有地で、勝手に入ることはできない。1994年「おおたかの森トラスト」は、野生の生き物を元気にするため、森を借り・売りに出された森を買うことを目的に発足した。当初は森のゴミ拾いが主な活動で、長年放置された家電製品、家財道具、自動車、建築廃材等を拾い出していた。ゴミ拾いでも、勝手に森の中に入ることは許されないが、地主さん達は大目に見ていてくれたに違いない。
 発足から十一年、多くの人のお世話になっている。狭山市の仲川幸成さんもその一人で、「あなた達が本当にヤマを守るなら私の林を貸しましょう。知人にも声を掛けてみよう」。こうして仲川さんの二ヵ所と知人の森を借りることができ、念願の保全活動の一歩を踏み出すことができた。現在、仲川さんの森一ヵ所は、狭山市立入間野小の学習林として大活躍している。
 一方、様々な事情で売られた森は、資材置き場や産廃施設に変貌し、ダイオキシン問題で悪名高くなった場所もある。私達も森を買っているが、市民の力では微々たるもの。「森が売りに出された時は行政が買って」と、所沢市議会と狭山市議会へ、地域の自治会と一緒になり請願を提出した。当時、仲川さんは狭山市議会議員だった。議会では「お金がないから買えない」との意見が多く、否決になりかけたが、仲川さんが皆を説得し、狭山市議会は「森の買取請願」を採択した。一方、所沢市議会では採択されなかった。
 武蔵野の平地林は、私達埼玉県民が全国に誇れる宝物だと思う。市民も行政も手を携えて、この運動を広げていきたい。今、おおたかの森の中にある「堀兼・上赤坂の森」が、埼玉県「緑のトラスト」の購入候補地にあがっている。県民投票で一位になれば、県の宝物を子供たちに引き継ぐことができる。八月十七日が締め切りだが、大変苦戦をしている。                (おおたかの森トラスト代表:足立圭子)
【戻る】