埼玉新聞「月曜放談」 2005年(平成17年)9月26日(月曜日) |
公共事業の変更で守られた平地林 |
所沢市内には県民の宝である「武蔵野の平地林」が数多く残っている。その中の一ヵ所がNHKテレビ「生き物地球紀行・武蔵野の雑木林にタカが舞いモズが鳴く」で紹介された。画面には、大空を舞う」オオタカや野生の生き物の営みが見事に映し出され、全国の視聴者を釘付けにした。 ところが、この舞台となった二十六ヘクタールの平地林は、平成五年、所沢市が運動公園「カルチャーパーク」として開発することを都市計画決定し、体育館・野球場・陸上競技場等を建設、十六年に埼玉国体の会場予定地とされていた。番組では、この平地林がブルドーザーに押しつぶされるか否か一言も触れなかった。 また、この林には以前からオオタカを含む多数の希少動植物が生息していたが、公園計画を作ったコンサルタントの報告書にはオオタカについて一切記載されていなかった。身近な緑が次々と失われる危機感から、市民の意識は年々高まり、保全活動が活発化してきた。九年、絶滅の危機に瀕したオオタカの繁殖が改めて確認され、市が行った生態調査で公園計画地がオオタカの保護に欠かせない重要地域であることが明らかになった。 これをふまえ十年、斉藤所沢市長は、市議会全員協議会を開き「カルチャーパークを環境保全型公園に変更したい」と提案した。その場を傍聴した私は、協議会が異様な雰囲気に包まれていたことを覚えている。 「人間よりもオオタカが大切なのか」「オオタカ様のためには何でも変更するのか」。いきり立った議員達の質問に、市長は「自然環境の保全と都市整備の調和は人間生活に必要である」と答え、私の胸は熱くなった。そして十一年の市都市計画審議会で、「カルチャーパーク」は、平地林をそのまま残した総合公園に見直すことが認められた。 一度、都市計画決定した大規模公園がオオタカを守る目的で大幅変更されたことは、全国でも初めてと聞く。所沢市長と市職員の英断に心から感謝したい。その後、この公園周辺に建設された東部クリーンセンターや県道東京狭山線等で自然環境と最大限調和した公共事業が実施された。この一帯の先進的な取り組みは、各方面から評価され、表彰されたり、外国からの視察等も相次いでいる。 (おおたかの森トラスト代表:足立圭子) |
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