オオタカの子育て
 この森には、オオタカが住んでいます。オオタカが住んでいることは、それだけ豊かな自然が残っていることです。オオタカが住むには100ヘクタールから200ヘクタールの森が必要です。オオタカは小さい鳥を捕ることは、ほとんどありません。捕まえるのはオナガ、ヒヨドリ、ムクドリ、キジバト、キジ、コジュケイ、カルガモ、マガモなど主に大きい鳥をエサにしています。驚いたことに、時々カラスを捕まえます。

 春、この森が若葉に包まれるころ、オオタカは、大きなアカマツに巣を作り三個の卵を産みました。春の嵐の中でも親鳥はじーっと卵を温めています。エゴノキの花が咲き匂う頃、ヒナが生まれました。元気なヒナは食欲おうせいで、一日にキジバト一羽を食べてしまいます。親鳥はエサを探しに遠くまで出かけますが、いくら狩りが上手なオオタカでも生きている鳥を捕まえるのだから失敗するほうが多いです。親鳥のいない時をねらって、カラスがヒナを取りにやって来ました。親鳥の一羽は巣の近くにいますが、カラスが群れでやって来ると、ヒナを奪われてしまうこともあります。白い産毛から少しずつ茶色の羽に変わって来ると、エサの量も多くなります。

 六月、オオタカが子育てにがんばっている頃、森は梅雨になりました。雨は森の木々を生き生きとさせるだけでなく、土の中の生き物にも恵みを与えてくれます。
 オオタカの巣では、親鳥が大きく口を開けたヒナにエサを与えています。元気なヒナは早く大きくなりますが弱いヒナは、エサをたくさんもらうことができないので大きくなれません。エサが豊富に取れる時は、みんな順調に育ちますが、長雨の年や、まわりの環境が変化した時は、一羽も育てられないことがあります。せっかく巣を作ってもまわりの木を伐ったり、人がうろうろしたり、カラスがじゃまをしたりすれば巣を棄ててしまいます。
 一羽のヒナが小さいので心配です。巣立つ日が近付きました。ヒナはしばらくの間、親鳥と一緒に生活をして狩りの仕方をおぼえます。二羽のヒナが巣立ち、三日遅れて最後のヒナが巣立ちました。
 ところが十日ほどたって、一羽が無残な姿で死んでいるのが見付かりました。巣から飛び立てても、大空を飛ぶ力はなかったのかも知れません。

 やがて夏も終わりのある日の午後、森の中で大きな鳥が保護されました。助けてくれたおじさんは「捕まえる時、少しあばれたけど、大きなかごに入れたらおとなしくなったんで、まさかオオタカだとは思わなっかたよ」。最初の日は、ニワトリのようにおとなしくて黄色い目をキョロキョロさせて、おじさんのひざの上にいました。自分からエサを食べないので、強引に口を開けて鶏肉を突っ込みます。
 翌朝、獣医さんに診てもらうとつばさの骨が一か所折れて傷口が開いていました。けがをしてから一週間以上は経っているらしく、その間なにも食べていないので体力をなくしていました。縫ってギブスをしてもらいましたが、オオタカは体の大きい鳥なのでつばさの力が強くないと空を飛べません。飛べないとエサも取れません。
 飛ぶことのできないオオタカは、犬や猫そしてカラスのエサになってしまいます。幸いにもこのオオタカは、けがも治りつばさの力も付いて、大空へと飛んで行きました。

                          「オオタカの森へ」(武蔵野の森研究会)より

※最近は松枯れのためおおたかの森周辺のアカマツはほとんど全滅状態になっています。そのためオオタカはヒノキやスギなどにも巣を作るようになっています。この地区では見られませんが、サクラやコナラなどの広葉樹も利用しているという話も聞きます。
※オオタカのヒナは卵から孵っても巣立ちするまでには色々な危険が待ちうけています。最近はカラスが増えて巣を襲いヒナを奪うこともあり、またせっかく順調に育っていても密猟されることもあります。2006年6月には実際におおたかの森でも密漁事件がおこり2羽のヒナが被害にあいました。この事件は新聞でも報道されましたので覚えている人もいるでしょう。無事に巣立ってもエサを獲れずに死んでしまうオオタカもいます。さらに巣立ちしても棲める森がなく(生まれた森は親の縄張りですので森を出なければなりません)、遠くへ移動することもあります。栃木県の那須で巣立ったヒナが標識調査の結果伊豆半島まで移動したという記録もあります。おおたかの森で巣立ったヒナたちはどこへ行くのでしょうか?(2007.6.12)
※オオタカのヒナの育ち具合は巣によってばらばらのようです。下の写真8と9を見比べると6月17日のヒナと6月23日のヒナではまったく大きさが違うのが分かります(8と9の写真の場所は別の場所です)。また、同じ巣のヒナでも育ち方は違うようです。(2007.7)
 2007年のオオタカの巣立ちではおもしろい生態が見られました。普通巣立ちしたヒナは巣立ち直後以外はほとんど巣に戻ることはないのですが、一つの巣で巣立ち後1ヶ月たってもちょくちょく巣に戻って親からエサをもらう姿が見られました。よほど巣のいごこちが良いのでしょうか?

 2008年 オオタカが獲物のヒヨドリをサッカー場グランドのネットに追い込んで狩りをする様子がたびたび観察されました。ネットに追い込むことで狩りの効率も良くなったようです。
特にヒヨドリが群れで現れた時がオオタカにとって狩りのチャンスです。更に面白いことにこのオオタカの狩りの様子を見ていたカラスがそれを真似してヒヨドリをネットに追い込み狩りをしました。見事に捕まえ、悠然と飛び去りました。カラスはとても頭がよく、オオタカの狩りを見て覚えたようです。

 2012年 今年はオオタカにとって受難の年になりました。3個の卵をカラスに取られてしまった巣、台風の強風で巣が丸ごと落下し前日までに確認できていたヒナ2羽が生死不明、道路工事の影響か営巣しなかった巣といろいろでした。自然界で生きることの大変さがよく分かります。ただでさえ生きていくのが大変なのですから私たち人間は彼らが安心して生きていける環境を残してあげなければ・・・・そんな中、今年はだめか、とあきらめていた場所でいつもより1か月も遅く3羽の巣立ちを確認することができました。(写真12,13)ちょっとうれしいニュースでした。

 2016年 初めて親鳥の排糞場面を観察しました。巣を汚さないようにお尻を巣の外に向けて一瞬で飛ばしました。(写真14,15)


1 オオタカのヒナ
(inoue)

2 巣立ち直前のヒナ
(adachi)

3 オオタカの巣

4 2004.7.3の巣立ちビナ

5 2005.7.2
巣立ち直前のヒナ

6 2005.8.27
水浴び中の幼鳥

7 2007.6.3
エサを運んできた親

8 2007.6.17
巣立ち間近のヒナ

9 2007.6.23
大きくなった2羽のヒナ

10  2007.7.28
エサをつかんだ巣立ちビナ

11 2009.5.10
枝に静かにとまっているオオタカ

12  2012.7.22
あきらめていた場所で巣立ちビナ1羽を確認できました
まだ巣立ち直後のようです。ずいぶん遅い巣立ちです。

13  2012.7.29
3羽の巣立ちビナがまだ巣の周りにいました
が3羽一緒の姿は撮れませんでした
12,13は同じ場所です。
 
 14 2016.6.12
巣を汚さないようにお尻を外に向けだして 
15 2016.6.12
一瞬で排糞! 
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